A1 中国では1999年まで、契約に関する法体系は「民法通則」、「経済契約法」(1981年)、「渉外経済契約法」(1985年)、「技術契約法」(1987年)およびその他契約関係の特別法によって構成されていました。
しかし、契約に関する法制度を統一するために、1999年に「契約法」が制定され、同時に「経済契約法」、「渉外経済契約法」、「技術契約法」が廃止されました。
つまり、中国の現行契約法体系は、1999年の「契約法」を基本法律としています。
今回は「契約法」の総則で定められた契約に関する一般的規定を勉強しましょう。
A2 契約は、平等的主体である自然人、法人、その他組織の間における民事的権利義務関係の設立、変更、終了に関する協議です。
ただし、「契約法」における「契約」は婚姻、養子縁組、親権等身分に関する協議を除きます。
A4 当事者は、書面、口頭及びその他の方式で契約を締結することができます。ただし、法律、行政の法規が書面方式を採用することが規定された場合、書面形式を採用しなければなりません。
また、当事者の間に書面形式の使用を定めた場合、書面形式を採用しなければなりません。書面方式とは、契約書、書簡及び電子データ(電報、テレックス、ファクシミリ、電子データ交換及び電子メールを含む)等有形に記載された内容を表現できる方式をいいます。
A5 契約の内容は当事者の約定により、通常は下記条項が含まれます。
① 当時者の名称又は氏名、住所
② 目的
③ 数量
④ 品質
⑤ 価格又は報酬
⑥ 履行期限
⑦ 場所及び方式
⑧ 違約責任
⑨ 紛争の解決方法
当事者は各種契約のモデルを参照しながら契約を締結することができます。
A6 はい。申込とは他人と契約を締結する意思表示を指し、当該意思表示は、下記の規定に符合しなければなりません。
① 内容が具体的、確定的なものであること
② 申込を受ける側の承諾を得た場合、申込者がその意思表示に拘束されることになること。
申込要請は、自分に対して申込を発すよう他人に求める意思表示です。付送価格表、競売公告、入札公告、株式募集説明書、商業広告等は申込要請となります。申込の規定に符合する商業広告は申込と見なします。申込は、申込を受ける側に到達した時点から、その効力を生じるものとします。
電子データ方式による契約締結の場合、受取人が特定のシステムを指定して電子データを受け取るときには、当該電子データが、当該特定システムに受信された時間を到達時間とし、特定システムを指定していない場合、当該電子データが受取人のいずれかのシステムに受信された最初の時点を、到達の時点とします。
A7 承諾とは、申込を受ける側が申込に同意する意思表示をいいます。承諾は通知の方式で発しなければなりません。ただし、取引の慣習又は申込表明に従い、承諾行為を通じて承諾を表すことができる場合を除きます。
承諾は申込が確定された期限以内に、申込者に届かなければなりません。承諾期限を確定していない場合、承諾は下記規定に従って到達しなければなりません。
① 対話の方式で申込を行なう場合、即時に承諾をしなければなりません。
ただし、当事者に別途の約定がある場合は、この限りではありません。
② 非対話の方式で申込を行なう場合、承諾は合理的期限内に届かなければなりません。
申込は書簡又は電報によって行なった場合、承諾の期限は書簡に記載された日付又は電報を発送した日より起算します。日付を記載していない書簡は、書簡を郵送した消印日より起算します。電話、ファクシミリ等の高速電信方式によって行なった申込の場合、承諾期限は、申込が申込を受ける側に届いた時点から起算します。
契約は承諾が効力を生ずる時点より、成立するものとします。承諾は通知が申込者に届いた時点により、効力を生ずるものとします。通知が不必要な承諾の場合は、取引の慣習又は申込の要請に従い承諾の行為が行なわれた時点から、効力を生ずるものとします。
A8 法律に基づき成立した契約は、成立した時点で効力を発します。
ただし、法律及び行政法規により契約の効力に関して、許可、登録等の手続を経なければならないと規定されている場合は、その規定に従います。
A9 できます。効力発生条件付の契約は、条件が達成した時点で効力を発するものとします。解除条件付の契約は、条件が達成した時点で効力を失います。
当事者が自らの利益のために条件の達成を不正に阻止した場合、条件は達成したものとみなします。
条件の達成を不正に促進した場合、条件は達成していないものとみなします。
A11 民事行為能力制限者が締結した契約は、法定代理人の追認を経て当該契約は有効となります。
ただし、純粋に利益獲得のための契約、又はその年齢や知能、精神的健康状況に適合した契約は、法定代理人の追認を経る必要はありません。
相手方は、1ヶ月以内に追認する旨を法定代理人に催告することができます。法定代理人が確答をしなかった場合、追認を拒絶したものとみなします。契約が追認される前に、善意の相手方は取消権を持ちます。取消は通知の方式によって行わなければなりません。行為者が代理権を有せず、また代理権を超え、又は代理権終了後に被代理人の名義で締結した契約は、本人の追認を得なければ、本人に対して効力がないものとし、行為者が責任を負うものとします。
相手方は、1ヶ月以内に追認する旨を本人に催告することができます。
本人が確答をしなかった場合、追認を拒絶したものとみなします。契約が追認される前に、善意の相手方は取消権を持つものとします。取消は通知の方式によって行わなければなりません。行為者が代理権を有せず、代理権限を超え、又は代理権終了後に、本人の名義において契約を締結したとき、相手方が行為者の代理権を信ずるに足る理由があった場合、当該代理行為は有効です。
法人又はその他の組織における法定代表者や責任者が、権限を超えて契約を締結した場合、相手側がその権限超を知り得たか知り得るべき場合を除き、当該代表行為は有効です。
A12 下記の事由のいずれかに該当する場合、契約は無効となります。
① 一方が詐欺、強迫の手段を用いて契約を締結し、国家の利益を害した場合。
② 悪意に共謀し、国家、集団又は第三者の利益を害した場合。
③ 合法的な形で非合法的な目的を覆い隠した場合。
④ 社会の公共利益を害した場合。
⑤ 法律、行政法規における強制的規定に違反した場合。
また、契約における下記の免責条項も無効となります。
① 相手側に人身傷害をもたらした場合。
② 故意又は重大な過失により、相手側に財産の損失を与えた場合。
A13 下記の契約において、当事者の一方は契約の変更又は取消を人民法院又は仲裁機関に求める権利があります。
① 重大な誤解によって締結された場合
② 契約締結時に著しく公平性を欠く時
一方が詐欺、強迫的な手段によって、又は他人の弱みに付け込んで、相手方に実際の意思に反する状況において契約を締結した場合、損害を被った側は人民法院又は仲裁機関に契約の変更又は取消を求める権利があります。当事者が契約の変更を請求した場合、人民法院又は仲裁機関は契約を取消してはなりません。
下記の事由のいずれかに該当する場合、取消権は消滅します。
① 取消権を有する当事者が、取消の事由を知り得た時、又は知り得るべき日より1年以内に取消権を行使しなかった場合
② 取消権を有する当事者が取消の事由を知り得た後に、取消権を放棄する旨を明確に示し、又は自らの行為によって取消権を放棄した場合
無効の契約又は取消された契約は、当初から法的約束力を持ちません。契約の一部が無効となり、その他の部分の効力に影響しない場合、その他の部分は依然有効です。
契約が無効、取消、又は終了された場合、契約における独立存在する紛争解決方法に関する条項の効力には影響しないものとします。
契約が無効、又は取消された後、当該契約によって取得した財産を返還しなければなりません。返還できない物、又は返還する必要のない物については、金額に換算して補償しなければなりません。
過失のある側は、相手側にもたらした損失を賠償しなければなりません。両方に過失があった場合は、各自が相応の責任を負わなければなりません。
当事者の悪意共謀で国家、集団又は第三者の利益が損害された場合、これによって取得した財産は、国家の所有に帰属し、又は集団、第三者に返還しなければなりません。
A14 当事者は約定に基づき、自らの義務を全面的に履行しなければなりません。
当事者は、誠実信用の原則を遵守し、契約の性質、目的や取引の慣習によって、通知、協力、秘密保持等の義務を履行しなければなりません。
契約の効力発生後、当事者が品質、価格又は報酬、履行場所などの内容について当事者間の約定がないか又は不明確な場合は、補充協議を行うことができます。補充協議が成立できない場合は、契約の関連条項又は取引の習慣に従って確定させます。
A15 補充協議や契約の関連条項、取引習慣でもまた確定できない場合は、下記の規定を適用します。
① 品質基準が不明確な場合は、国家基準、業界基準に基づき履行する。
国家基準、業界基準がない場合、通常基準又は契約の目的に符合する特定の基準に基づいて履行します。
② 価格又は報酬が不明確な場合は、契約締結時の履行地の市場価格に従い履行します。
法により、政府指定価格又は政府の指導価格で執行しなければならない場合については、その規定に従って履行します。
③ 金銭を給付する契約で履行地が不明確な場合は、金銭の給付を受ける一方の所在地を履行地とします。不動産を引き渡す契約では、不動産の所在地を履行地とします。その他の目的においては、履行業務がある一方の所在地を履行地とします。
④ 履行期限が不明確な時は、債務者は随時に履行でき、債権者は随時に履行を請求できるが、相手側に必要な期間を与えなければなりません。
⑤ 履行方式が不明確な時は、契約の目的を実現するために有利となる方式によって履行します。
A16 当事者は協議の一致により契約を変更することができます。
法律及び行政法規により契約の変更に許可、登記などの手続を取らなければならない規定がある場合はその規定に従います。当事者が契約変更の内容に対して明確に約定していないときは、変更していないことと推定されます。
A17 できます。ただし、下記の事由のいずれかに該当するときにはこの限りではありません。
① 契約の性質により譲渡することができない場合
② 当事者の約定により譲渡することができない場合
③ 法律の規定により譲渡を禁止している場合
債権者が権利を譲渡するときは、債務者に通知しなければなりません。通知してない場合、当該譲渡は債務者に対する効力を有しません。債権者は権利譲渡の通知を取り消してはなりません。ただし、譲受人の同意を得た場合はこの限りではありません。
債権者が権利を譲渡するときは、受ける側は債権に関わる従的権利を取得します。ただし、債権者自身に専属する従的権利はこの限りではありません。
A18 下記の事由のいずれかが発生したときは、契約上の権利義務が終了します。
① 約定通りに債務が履行された場合
② 契約が解除された場合
③ 債務が相互に相殺された場合
④ 債務者が法律に基づき標的物を供託した場合
⑤ 債務者が債務を免除した場合
⑥ 債権と債務が同一人に帰した場合
⑦ 法律の規定又は当事者の約定により終了が定められているその他の事由がある場合
契約の権利義務が終了後は、当事者は誠実信用の原則に則り、取引慣習に従って、通知、協力、秘密保持等の義務を履行しなければなりません。
A19 当事者は、合意にて契約を解除することができます。当事者は、一方が契約を解除する条件を約定することができます。契約解除の条件が成就したときに、解除権を有する者は契約を解除することができます。
下記の事由のいずれかが発生したときは、当事者は契約を解除することができます。
① 不可抗力により契約の目的を達成できなくなった場合
② 履行の期限が満了する前に、当事者の一方が主な債務を履行しない旨を明確に、又は自己の行為によって表示した場合
③ 当事者の一方が主な債務の履行を遅滞し、催告を受けた後にも合理的な期間内に履行しない場合
④ 当事者の一方が債務の履行を遅滞し、又はその他の違約行為により契約の目的が達成できなくなった場合
⑤ 法律で規定するその他の事由がある場合
法律の規定又は当事者の約定により解除権の行使期間が定められているときに、期間が満了まで当事者が行使しないときは、当該権利は消滅します。法律の規定又は当事者の約定により解除権の行使期間が定められていないときに、相手方の催告を受けた後、合理的な期間内に行使しない場合、当該権利は消滅します。
当事者の一方が契約法の規定に基づき契約の解除を主張する場合は、相手方に通知しなければなりません。契約は通知が相手方に到達した時点で解除されます。
相手方は異議があるときには、契約解除の効力の確認を人民法院又は仲裁機関に請求することができます。法律及び行政法規により契約の解除に許可、登記などの手続を行わなければならないと規定されている場合、その規定に従います。
契約を解除した後にまだ履行されていないものは、履行を終了します。既に履行している契約については、履行の状況と契約の性質に応じて、当事者は現状回復、その他の救済措置を採る要求をすることができ、かつ損害賠償を請求する権利を有します。
A20 契約の権利義務の終了は、契約の中で定められている決済と精算に関する条項の効力に影響しません。当事者は相互に弁済期にある債務を負い、当該債務の目的物の種類、品質が同様であるときには、一方は自己の債務をもって相手方の債務と相殺することができます。
ただし、法律の規定又は契約の性質により相殺することができないときはこの限りではありません。当事者が相殺を主張するときは、相手方に通知しなければなりません。
通知は、相手方に到達した時点より効力を生じます。相殺には条件又は期限を付けてはなりません。当事者は相互に債務を負い、目的物の種類、品質が異なる債務であっても、当事者双方が合意したときは、相互に負担する債務を相殺することもできます。
A21 はい。では、違約責任についてお話しましょう。
当事者の一方が契約義務を履行せず、又は約定に基づいて履行していないときは、履行の継続、救済措置の採用、又は損害の賠償等の違約責任を負わなければなりません。
当事者の一方が契約義務を履行しない旨を明確に声明し、又は自己の行為によって表示したときは、相手方は履行期限が満了する前に違約責任を負うように請求することができます。
当事者の一方が価格又は報酬を支払わないときは、相手方はその価格又は報酬の支払を請求することができます。